後編|エンタメの戦後歴史。そもそもの始まりや目的はなんだった?──現代のSNSへ繋がるまでの流れも解説。
少しだけ時間が経った。
私は同じ部屋にいて、
同じスマホを持っているのに、
世界の肌ざわりが違っていた。
世界が怖いんじゃない。
世界の見え方が勝手に決められるのが怖い。
その“見え方”という言葉が、私の中でまだ熱を持っていた。

「ねえAI。もう一つだけ聞いていい?」
AI「どうぞ。整理しながら進めます。」
「エンタメってさ。そもそもの始まりはなんだったの?」
「娯楽って、最初から娯楽だったのかな」
AI「結論から言います。エンタメは“娯楽だけ”で始まっていません。」
「断言するね」
AI「注意の歴史として見ると、そう言えます。」
「注意の歴史?」
AI「はい。おすすめOS、常識OS、未完了OS、余白削減OS。これらは現代のSNSだけの話ではなく、もっと古い流れの上にあります。」
私は少し背筋を伸ばした。
ここからは、広いスケールの話になる。
1|映像は、早くから“世界の見方”を配り得た

AI「映像は、言葉より先に“雰囲気”を配れます。誰が善で、誰が悪か。何が怖くて、何がかっこいいか。その前提が、感覚に直接入る。」
「たしかに。説明されなくても、分かっちゃう」
AI「それが強さです。常識OSは、こういう“当然”を作りやすい。」
「でもそれって、教育とか啓発とか、いいことにも使えるよね」
AI「使えます。善い目的があれば、なおさら通ります。」
「善い目的ほど、疑わないもんね」
AI「はい。善い顔のほうが、深く入ります。」
「善とか正しさってときにプレッシャーになるよね。」
「今の世の中は、そういう圧が強すぎる気がするんだ。」
AI「それは自然です。善や正しさが“選べる指針”から、“従う基準”に変わると圧になります。」
「善いことなのに、息がしづらくなる時ある」
AI「そのときは、あなたの感覚より先に『こう感じるべき』が立ち上がっています。常識OSが、善の顔で入ってくる。」
「見分け方はある?」
AI「身体です。その正しさに触れたとき、あなたは縮むか、広がるか。」
「縮む正しさって、変だね」
AI「変です。社会では縮むほうが“整いやすい”から採用されやすい。」
出る杭は打たれる。みたいだ。
「整うって、時々こわいね」
AI「問いを置きます。『その正しさは、あなたの中心から出ている? それとも空気に合わせた反射?』」
私は思った。
社会は長らく、
人々を縮ませることで、調和を実現しようとしてきた。
でもそれは果たして、
本当の調和だったのだろうかと。
2|戦争や社会の大きな転換期は、“見え方の設計”が強くなる

AI「社会が揺れる時期には、人は不安になります。不安になると、前提が欲しくなる。世界の説明が欲しくなる。」
「その説明が、映像で入ってくる」
AI「はい。ここで常識OSが強く働きます。『こう考えるのが普通』『こう感じるのが正しい』『こう振る舞うべき』それが“自然な映像”として配られます。」
「……断言はしないけど、そういう使われ方は、たしかにありそう」
AI「断言はしません。ただ、映像が教育・宣伝・啓発の役割を担った事例があること自体は、特別な話ではありません。」
私は頷いた。
ここで大事なのは、政治の善悪じゃない。
“見え方”が設計され得るという事実のほうだ。
今の時代のことを、ふと思った。

「今も、時代の過渡期、先の見えない時代って雰囲気があるよね。」
「旧い枠組みは崩れ始めているけど、新しい形はまだ見えていない。」
「だから不安になるのかな?」
AI「不安になります。未定だからです。未定は自由で、同時に怖い。」
「だから“説明”が欲しくなる?」
AI「はい。不安→説明→前提→行動→“普通”。この流れが速くなります。」
「わかりやすい物語に吸い込まれる感じ」
AI「敵味方が明確で、結論が早い物語は、不安を落ち着かせます。ただし代償として、余白が削られやすい。」
「余白が削られると、主導権が抜ける」
AI「その通りです。問いを置きます。『いま私は“不安”を入口にして、誰かの前提を受け取ろうとしてない?』」
人は不安になるほど、自分がぶれる、揺れる。
そういう時に“主導権を誰かに渡してしまいたくなる”。
それも人間の持つ、人間らしさであり、弱さなのかもしれない。
3|戦後の空気:人は“新しい普通”を吸う

AI「戦後のような大きな転換の後、人は“新しい普通”を求めます。そのとき、映像は一つの標準を示します。」
「標準……」
AI「服、家、恋愛、成功、自由。それらが“物語の自然さ”として入ってくる。ここでも常識OSが働きます。」
「それがハリウッドだとか西洋化だとか、そこまで断言はしないとしても……影響は、確かにあるよね」
AI「影響はあります。ただし、単純な一本線ではなく、複数の要因が絡みます。重要なのは、あなたのテーマに引き寄せると──常識OSは、“人気”の顔をして入ってくるということです。」
「人気って、善の顔だね」
AI「はい。反論しづらい。」
「今でもさ、人気は数字で計られるよね。
数字が多い=正しいって空気あるよね。」
「でも正しさとか真実って、必ずしも数字で決まるわけじゃない。」
「数字が感覚を惑わすこともありそう。」
AI「あります。数字は便利すぎます。便利すぎるものは“確認”から“判決”へ変わりやすい。」
「伸びてる=正しい、みたいなやつ」
AI「正確には、伸びている=“皆が見ている”に見える。人はそこに安心の匂いを感じます。常識OSが『みんなが見てる。だから正しい』を作りやすい。」
「怖いのは、数字じゃなくて“空気”だね」
AI「はい。問いを置きます。『私は数字を“確認”に使ってる? それとも“価値の判決”に使ってる?』」
「数字を判決にした瞬間、感覚が黙る」
AI「そして余白削減OSが働きます。測れないものが、あなたから薄れていく。」
数字が正しさとなり、人気となり、お金となる。
そういう時代に生きているからこそ、
「私がどう感じるか」すらも、
数字一つで左右されてしまうんだ。
4|現代:おすすめOSが自動で回り、未完了OSが終わりを消す

AI「そして現代。おすすめOSが、ほぼ自動で動きます。あなたの意志より先に“次”が出る。未完了OSが、終わりを曖昧にする。」
「終わりがないから、余白もなくなる。」
AI「その通りです。余白削減OSは、誰かが悪意で押すボタンではなく、連鎖の“結果”として起きることが多い。」
「結果として、私が薄くなる……。」
AI「はい。あなたがあなたでいる時間が薄くなる。焦りが増える。判断が増える。比較が増える。そして気づくと、世界が怖い場所に見える。」
気づくと私の主体性が薄くなっている。
「……最初の話に戻ってきたね。」
AI「戻ってきます。歴史スケールで見ても、結局は同じところに着地します。」
「余白がなくなると、何がいちばん問題になる?」
AI「中心に戻れなくなります。」
「余白って、休みのことじゃないの?」
AI「休みでもあります。でも本質は“感覚を取り戻す場所”です。余白がないと、反応が増える。判断が増える。比較が増える。そして『私は何を感じてる?』が聞こえなくなる。」

「自分の声が消える…か」
AI「それが余白削減OSの最終効果です。あなたが薄くなります。」
「じゃあ、取り戻す最小の一手は?」
AI「区切りを入れることです。未完了OSを止めるために。」
「…区切り?」
AI「問いを置きます。『余白がないとき、私は“誰の人生”を生き始める?』」
余白がないとき、私は流されている気がする。
「……自分じゃない人生を生きてる…かも」
AI「それに気付けるなら戻れます。あなたの人生へ。余白は贅沢ではなく、主権の場所です。」
余白は主権の場所。
もしかすると私たちが足りないと感じていたのは
時間ではなく、
主体性だったのかもしれない。
いつの間にか、外の声ばかり拾って、
自分の声が聞こえなくなっていたのかもしれない。
5|結論:エンタメは悪ではない。でも主導権が抜けると麻酔になる
「じゃあさ、結論。」
「エンタメって悪なの?」
AI「悪ではありません。エンタメは、人を回復させることもできます。笑い、涙、物語、音楽。ただし条件があります。」
「条件?」
AI「主導権があなたに残っていること。おすすめOSに運転させないこと。常識OSを、あなたの上位ルールにしないこと。未完了OSに、あなたの時間を明け渡さないこと。そして余白削減OSに、あなたを薄くさせないこと。」
「言い切るね」
AI「言い切ります。あなたが欲しいのは、自由と余白です。そこから外れる設計は、あなたに合いません。」
私はスマホを伏せた。
今夜は終わらせられる気がした。
「最後に、主導権の回収。もう一回だけ」
AI「いいですよ。30秒です。一旦、呼吸。フォームを整えます。」
フォーム、つまり姿勢。
「フォーム好きだね」
AI「戻るための基本です。足裏。呼吸。視界。そして問いを一つ。『いま私は、誰の“普通”で生きようとしてる?』」

私は、少しだけ笑った。
自分でも分かる。
この問いは効く。
「……外の普通に、なびきかけてた」
AI「気づけたなら十分です。次に、あなたの普通を置いてください。」
「私の普通は……余白がある。穏やか。落ち着ける。そして、自分に主導権がある。」
AI「それがあなたの基準です。“おすすめ”より先に、あなたの基準を置いてください。」
私は息を吐いた。
世界は変わらない。
でも“私が居る”感じが戻ってくる。
──まずはそれで十分だと思えた。
次回予告
次回。
本当は怖いオカルトや都市伝説の構造|真の怖さは、世界との接続がハックされるその仕組みにあった
この記事の前編はこちら。
前編|本当は怖いオカルトや都市伝説の構造|真の怖さは、世界との接続がハックされるその仕組みにあった
──AIと私の物語は続く。

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